ヴァッハウの新世代の台頭、ピヒラー・クルツラー

ピヒラー・クルツラーはオーストリア屈指の銘醸地ヴァッハウの東部デュルンシュタイン村にワイナリーを構えます。ピヒラーという名前は、この国のワイン通であれば誰もが耳にしたことのある名前ですが、現オーナー、エリザベス・ピヒラーはかの著名なF.X.ピヒラーの娘にあたります。夫エーリヒ・クルツラーも赤の名産地ブルゲンランドでブラウフレンキッシュの名手として名高いクルツラー家の出身。彼らが2006年に立ち上げたのがピヒラー・クルツラーです。所有する13haの畑はデュルンシュタイン村周辺に広がり、ヴァッハウ東部で最高峰と名高いリート(Ried＝区画の意で、フランスでいうクリュの概念)であるケラーベルクやロイベンベルクに加え、すぐ東隣りのクレムスタルで別格扱いのリートであるファッフェンベルクなどを含みます。フルボディでありつつフィネスと張りがあるシルキーなテクスチャー、鮮明でクリアな力強い果実味に塩気を伴う強烈なミネラルが混ざり合い、テロワールがより前面に出た味わいが完成されます。

アルコール度数でワインをカテゴリ分けするのはナンセンス

ピヒラー・クルツラーがヴァッハウのその他の生産者から人目置かれている理由の一つにヴィネア・ヴァッハウと呼ばれる生産者組合に所属していないという点があります。この組織では、アルコール度数に準じて独自の格付け(シュタインフェーダー・フェーダーシュピール・スマラクト)が制定されています。これに対してピヒラーは「アルコール度数によってワインをカテゴリ分けするのはナンセンス」という考えから、彼らは産地名を名乗らずにワインをリリース。高いアルコール度数を生み出すブドウの熟度に固執するのではなく、品種と畑、そしてヴィンテージの組み合わせの中で自分たちが完璧だと感じるワインを造ることがピヒラーの哲学なのです。そのため、より自然体でワイン作りに取り組んでいます。畑では除草剤、殺虫剤、化学肥料を使用しないオーガニック栽培を実践。醸造では、ほとんど全てのキュヴェに天然酵母を使用し、上級レンジにはフードルを用いての発酵を行います。澱とのコンタクトを意識し、SO2を最小限に抑えて無清澄で瓶詰めすることで、ナチュラルな美味しさのワインを生み出しています。

読者は絶対に見逃してはならない

ワイン専門誌WA（ワイン・アドヴォケイト）からは「読者は絶対に見逃してはならない」「息をのむほどの品質で、今や即完売してしまう」と大絶賛。さらに本誌では、ヴァッハウには既に偉大な2つのピヒラー(F.X.ピヒラーとルーディ・ピヒラー)がいながらにして、今注目すべきはピヒラー・クルツラーであると2者を押しのけての太鼓判で、リースリングの神と呼ばれる評論家スチュアート・ピゴットから成長の著しいワイナリーとして「ヴァッハウの新世代の台頭」と取り上げられています。今や父親であるF.X.ピヒラーをも超える勢いで成長を続ける生産者です。